「成功したければ、睡眠時間を削って努力せよ」——ひと昔前は、そんな空気がありました。

ですが、世界のトップで戦うアスリートたちは、まったく逆のことをしています。一流であればあるほど、驚くほどよく眠っているのです。今日はその理由を、科学の話も交えてお届けします。

大谷翔平選手は「10時間以上」

メジャーリーグの大谷翔平選手は、かねてより睡眠を最重要視していることで知られ、毎日10時間以上の睡眠を心がけていると公言しています(ご本人が語っているインタビュー動画はこちら)。

投打の二刀流という、誰よりも身体を酷使するはずの選手が、誰よりも眠る。これは偶然ではありません。

金メダリストの土台も「最低8時間」

2026年冬季オリンピック・女子フィギュアスケートで金メダルを獲得したアリサ・リウ選手(アメリカ)のエピソードも印象的です。

リウ選手はかつて燃え尽きて16歳で一度競技から退いたほど、メンタルヘルスの不調に苦しんだ時期があったそうです。その彼女が復帰し、頂点に立つまでの土台になった習慣のひとつが——「よく眠ること」。TODAY.comのインタビュー(※リンク先は英語の記事です)で、調子よくいるためには最低8時間の睡眠が必要だと語っています。

強靭なメンタルは、根性ではなく、まず睡眠から。金メダリストの言葉には重みがあります。

氷の上で優雅に滑るヒツジ執事 よく眠れた日は、身のこなしもこのとおり(イメージです)

なぜ「眠るほど上達する」のか——身体で覚える記憶

「眠ることが大事なのは分かるけれど、練習時間を増やした方が上達するのでは?」——そう思われるかもしれません。ここで、書籍『快眠法の前に 今さら聞けない 睡眠の超基本』(柳沢正史 監修/朝日新聞出版)で解説されている、興味深い話をご紹介します。

記憶には2種類あります。

  • 陳述記憶:頭で覚える記憶(言葉・知識など)
  • 手続き記憶(技能記憶):身体で覚える記憶(自転車に乗る、楽器を弾く、ボールを投げる…)

手続き記憶は一度覚えるとなかなか忘れない記憶で、睡眠と深く関わっているとされています。頭で覚える記憶と同じように、身体の記憶も、睡眠をとることでしっかりと定着するのです。

同書によれば、睡眠が手続き記憶の向上をもたらすことは、2002年に報告されたハーバード大学の実験——キーボードのタイピング技能の向上と睡眠の関係を調べたもの——でも示されているそうです。

つまり、こういうサイクルです。

  1. トレーニングをする(技術を身体に入力する)
  2. 眠る(疲れた身体を回復させ、技能記憶を定着させる)
  3. 本番で、理想のパフォーマンスを発揮する

練習の成果は、練習中ではなく、眠っている間に身になる——一流アスリートが睡眠を「トレーニングや栄養と並ぶ柱」と考えるのは、このためです。睡眠不足は怪我のリスクを高め、パフォーマンスの低下にもつながるとされます。眠ることは、サボることではなく、強くなるための仕上げの工程なのです。

これは、わたくしたちの毎日にも効く話です

「自分はアスリートじゃないから関係ない」——いえいえ、とんでもない。

  • 仕事のスキルも、資格の勉強も(陳述記憶)
  • 楽器の練習も、ゴルフのスイングも、タイピングも(手続き記憶)

覚えたことを自分のものにする仕上げは、すべて睡眠が担っています。

わたくし自身、かつて生活や仕事の「どうもうまくいかないな」の根っこが、じつは睡眠にあったと気づいた人間です(ヒツジですが)。眠りを整えてから、朝の頭のスッキリ感も、日中の集中力も、別ものになりました。大谷選手の10時間は真似できなくても、「今夜の睡眠を、今日の努力の仕上げとして大切にする」ことなら、今日から始められます。

まとめ

  • 大谷翔平選手は10時間以上、アリサ・リウ選手は最低8時間——一流ほどよく眠る
  • 身体で覚えた技能は、眠っている間に定着する(手続き記憶×睡眠)
  • 睡眠は「トレーニング→睡眠→本番」をつなぐ、パフォーマンスの仕上げ工程
  • スポーツに限らず、仕事・勉強・趣味の上達にも同じことが言える

「では、今夜の眠りの質をどう上げるか?」という方は、眠りを誘う、寝る前の5つの習慣お風呂は寝る何時間前に入るのがベスト?からどうぞ。今日の努力を、今夜の睡眠で仕上げましょう🌙

この記事は公開されたインタビュー・書籍にもとづく情報と、運営者の経験・感想によるものです。紹介した選手のみなさまと当ブログ・掲載商品には一切の関係はありません。また、医療行為や診断に代わるものではありません。睡眠のお悩みが続く場合は、専門の医療機関にご相談ください。