「日本人は働きすぎ」とはよく言われますが、その裏側で削られているものがあります。睡眠です。
しかもそれは「なんとなくそう思う」という話ではありません。さまざまな調査で、日本は世界でもっとも睡眠時間が短い国のひとつであることが、はっきりと示されています。
今日は書籍『快眠法の前に 今さら聞けない 睡眠の超基本』(柳沢正史 監修/朝日新聞出版)をもとに、日本の睡眠事情をデータで見ていきます。少しショッキングな内容かもしれませんが、これを知ることが、ご自身の眠りを見直すきっかけになれば幸いです。
データが示す、日本の睡眠時間の短さ
経済協力開発機構(OECD)の2021年の調査では——
| 平均睡眠時間 | |
|---|---|
| OECD加盟33か国の平均 | 8時間28分 |
| 日本 | 7時間22分 |
その差、じつに1時間以上。
さらに、睡眠計測アプリ「Sleep Cycle」を使った統計(世界経済フォーラム「Who's sleeping easy」より)では、日本人の平均は6時間18分という結果も出ています。
調査方法によって数字に幅はありますが、どの調査でも「日本は最短クラス」という結論は変わりません。
主要国と比べると、日本の短さは一目瞭然です
睡眠不足の経済損失は、年間15兆円
驚くべき試算があります。日本人の睡眠不足による経済損失は、年間15兆円にのぼるというのです。
理由はシンプルで、睡眠不足に陥ると日中のパフォーマンスが下がってしまうから。集中力も、判断力も、創造性も落ちる——それが国全体で積み重なった結果が、この数字です。
(睡眠中に脳と体で何が行われているかは、こちらの記事で詳しくご紹介しています)
「よく眠る国ほど、豊かである」というデータ
興味深いのは、国民一人あたりのGDPが高い国ほど、ほどよく眠っているという傾向が見られることです。
ニュージーランド、フィンランド、オランダ、イギリス、フランス——上位に並ぶのは、いずれも7時間半前後の睡眠を確保している国々。一方、日本や韓国は睡眠時間の短さで最下層に位置しています。
「眠らずに働くほど豊かになる」のではなく、むしろ**「よく眠る国のほうが、生産性が高い」**——データはそう語りかけてきます。睡眠を削って働くことが、いかに割に合わないか。国レベルで見ても同じなのですね。
昔から短かったわけではありません
ここで、多くの方が驚かれるであろう事実をひとつ。
日本人は、昔から睡眠時間が短かったわけではないのです。
NHK放送文化研究所「国民生活時間調査」によると、1960年の日本人の平均睡眠時間は8時間13分。理想に近い、じつに健やかな数字でした。
ところがそこから——
- 高度経済成長期
- バブル経済
- バブル崩壊からの「失われた30年」
このすべての期間を通して、睡眠時間は減り続けています。2010年には7時間14分。50年で約1時間も失われました。
右肩下がりが止まりません
好景気でも不景気でも、日本人は眠る時間を削り続けてきた。これは考えさせられる事実です。
女性のほうが、より深刻です
もうひとつ、見過ごせないデータがあります。日本では、女性のほうが睡眠不足に陥りやすい傾向にあるのです。
OECDの国際比較(2021年)を見ると、多くの国では女性のほうが男性より睡眠時間が長いのに対し、日本だけは女性(435分)が男性(448分)を下回っています。しかも女性435分=約7時間15分は、比較国の中で最短です。
他国では女性のほうが長いのに、日本だけ逆転しています
その一因として考えられているのが、女性の社会進出が進んでいるにもかかわらず、「家事・育児は女性の仕事」という意識がいまだに根強く残っていること。仕事と家庭の両方を担った結果、削られているのが睡眠時間なのだとしたら——これは個人の努力だけで解決できる問題ではありませんね。
まとめ:まずは「知ること」から
- 日本の平均睡眠時間は7時間22分(OECD加盟国平均は8時間28分)
- 睡眠不足による経済損失は年間15兆円という試算
- GDPが高い国ほど、ほどよく眠っている
- 1960年は8時間13分——50年で約1時間減少
- 女性のほうがより深刻(社会構造にも一因)
わたくしがこのデータを知ったとき、正直ぞっとしました。そして同時に、自分が長年「睡眠迷子」だったのも無理はないとも思ったのです。睡眠を削るのが当たり前の社会で育ってきたのですから。
ですが、だからこそお伝えしたい。あなたの眠りを取り戻すのは、あなた自身の選択です。社会の平均に合わせる必要はありません。
今夜、あと30分早く布団に入る。それだけでも、あなたはこの流れに逆らう一歩を踏み出したことになります🐑🌙
具体的な整え方は、眠れないときの対処法9つやお風呂は寝る何時間前に入るのがベスト?からどうぞ。
この記事は書籍および公開されている統計データをもとにした一般的な情報提供であり、医療行為や診断に代わるものではありません。データの数値は調査方法や年度により異なります。睡眠に関するお悩みが続く場合は、専門の医療機関にご相談ください。

