「結局、何時間眠ればいいの?」
睡眠にまつわる悩みのなかで、これほど多くの方が抱えている問いもないでしょう。人類永遠の悩みのひとつ、と言ってもよいかもしれません。
- 7〜8時間眠れたら、良い睡眠?
- 深いノンレム睡眠がたくさんとれたら、良い睡眠?
——なんとも、基準が分かりにくいですよね。
今日は書籍『眠っている間に体の中で何が起こっているのか』(西多昌規 著/草思社)をもとに、この問いに向き合ってみます。著者の西多氏は、早稲田大学睡眠研究所の所長などを務めておられる睡眠の専門家です。
そして——その答えは、わたくしの予想をはるかに超えてシンプルでした。
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結論:「まあよく眠れた」と思えていれば、それが良い睡眠
書籍のなかで示されていた答えは、こういうものでした。
その人が「まあよく眠れた」と思えていて、日中に元気に活動できていれば、それが「良い睡眠」
……いかがでしょうか。
「えー! 思っていたよりもアバウトだし、ハードル低め!」
わたくし、正直そう思いました(ヒツジですが)。もっとこう、「深部体温が何度下がって」「ノンレム睡眠が何%で」といった、厳格な基準が出てくるものと身構えていたのです。
「まあよく眠れた」と思える度合いには、当然ながらかなりの個人差がありそうです。ですが逆に言えば——それくらい主観的な感覚で「良い睡眠」と判断してOK、ということなのですね。
長らく睡眠迷子だったわたくしにとって、この一文はずいぶん肩の力を抜いてくれるものでした🐑
なぜ「主観」でいいのか——「悪い睡眠」を知ると分かります
とはいえ、「主観でOK」と言われると、かえって不安になる方もいらっしゃるでしょう。「気のせいってこともあるのでは?」と。
この背景には、「悪い睡眠」の存在があります。
たとえば、こんなケースです。
-
睡眠時無呼吸症候群の方
8時間以上眠っても浅い眠りが多くなってしまい、長時間眠ったとしてもすっきりしない
-
不眠症の方
ノンレム睡眠が健康な人並みにとれていても、本人は「そんなはずはない、睡眠は良くなかったはず」と訴えるケースがよくある
お気づきでしょうか。
上の例では「時間」が、下の例では「測定値」が、本人の実感と一致していないのです。
つまり——時間も、深い眠りの割合も、それ単体では「良い睡眠」を保証してくれない。だからこそ、本人の実感という物差しが意味を持ってくるのですね。
いま注目されている「睡眠休養感」
そして最近になって、睡眠時間や睡眠の質よりも重要かもしれないと明らかになってきた指標があります。
それが「睡眠休養感」です。
睡眠休養感 … 朝目覚めたときに、どれだけ体が休まったと感じたかを自己評価したもの
日中の活動性やパフォーマンスに注目した、主観的な指標です。とくに働く世代の健康にとって重要であることが分かってきているといいます。
つまり睡眠は、時間や深いノンレム睡眠の割合だけでなく——主観的にも満足度が高いほうが望ましい、ということになります。
反対に、主観的な「悪い睡眠」は
一方で気をつけたいのが、その逆のケースです。
主観的に「悪い睡眠」だと感じている状態は、不安や抑うつなど、メンタルヘルスの不調と関わっていることが多いとされています。心身ともにゆったり休めない、あるいは休んだ感覚が得られないためだと考えられています。
「よく眠れた気がしない」という感覚は、単なる気のせいではなく、心と体からのサインかもしれない——そう受け止めておくとよさそうです。
(眠れない夜が続いているときの具体的な対処は、眠れないときの対処法9つにまとめております)
「明確な基準がない」ことに、モヤモヤしますか?
あらためて「良い睡眠とは何か」という問いに、西多氏はこう答えているそうです。
「翌日に強い眠気を感じずに、すっきりと過ごせる睡眠」
「何時間以上」「ノンレム睡眠何%以上」といった明確な基準がないので、モヤモヤされる方もいらっしゃるとのこと。ですが——現代医学では、このような答えしかないのだそうです。
そのうえで、こうも伝えられています。
「夜の睡眠がおそらく原因で日中パッとしない」「日中の眠気がひどくて仕事にならない」ということでなければ、あまり考えすぎないほうがいい
……これは、なかなか救われる言葉ではないでしょうか😊
わたくしたちはつい、睡眠アプリのスコアや睡眠時間の数字に一喜一憂してしまいます。ですが本来、判断する物差しは「今日、元気に過ごせているか」という、もっと素朴なところにあったのですね。
では、自分に必要な睡眠時間はどう分かる?
「必要な睡眠時間はどうしたら分かりますか」という問いについても、正確かつ簡便に測る方法はないとのこと。
ただし、ひとつの目安が示されています。
週末に3時間以上寝過ぎていれば、慢性的な睡眠負債がたまった状態と言えるでしょう
これは分かりやすい指標ですね。休日に「気づいたら昼だった」という方は、平日にかなりの借金を積み上げている可能性があります。
(睡眠負債については1日1時間の睡眠不足を返すのに、約4日かかるで詳しくご紹介しています)
睡眠時間には、大きな「個人差」と「柔軟性」がある
そして西多氏が強調されているのが、この点です。
必要な睡眠時間には、個人による大きな差と「柔軟性」がある。
「7〜8時間睡眠が健康にもっとも良い」というデータはよく知られています。ですが、それも年齢によって変わります。
- 激しいトレーニングをしているアスリート:もっと長めの睡眠時間が推奨されている
- 高齢の方:8時間以上ぐっすり眠っている人は少数派と考えられる
(アスリートと睡眠の関係はこちらの記事でご紹介しています)
睡眠は、意外と融通が利く
さらに興味深いのが、睡眠には柔軟性があるという指摘です。
どうしても成し遂げなければならないことがあるとき、人は睡眠を削ります。そしてそういう状態でも、かなりの能力を発揮できてしまう。文学や芸術などクリエイティブな仕事では、睡眠時間が短くてもやり遂げられたり、不眠が創造性を高めるような現象さえ見られるといいます。
仕事以外でも同じです。たとえば——生まれたての赤ちゃんがいるお母さんに「8時間眠らないとダメですよ」と言ったところで、夜泣きを思えば現実的ではありませんよね。
大事なところでは、睡眠は融通が利く。
これもまた、救いのある事実だと思うのです。
ただし——こうした無理は、あとでたっぷり寝て埋め合わせをする必要があるとも書かれています。埋め合わせをしなければ、深刻なダメージを体に与えかねません。「柔軟性がある」は「削っても平気」とは違う、ということですね。
まとめ:「良い睡眠」は、自分で決めていい
- 良い睡眠とは「まあよく眠れた」と思えて、日中元気に活動できていること
- 時間や深い眠りの割合だけでは、良い睡眠は保証されない
- いま注目されるのは「睡眠休養感」=朝、どれだけ休まったと感じたか
- 明確な数値基準は現代医学にも存在しない
- 週末に3時間以上寝過ぎなら、慢性的な睡眠負債のサイン
- 必要な時間には個人差と柔軟性がある
「計測しても評価できず、自分でよく眠れたと思えればよし」——なんともアバウトな結論です。ですが著者は、そこが睡眠の面白いところだと綴っておられます。
なぜなら、人間の生き方は睡眠だけで決まっているわけではないからです。食事も、運動も、生活環境も、人間関係も。いろいろな要素が合わさって、わたくしたちは生きているのですから。
そして、著者による締めくくりの言葉が、たいへんふるっておりました。
「人は眠るために生きるのではない、生きるために眠る」 ——西多昌規『眠っている間に体の中で何が起こっているのか』より
……しびれますね🌙
睡眠を整えることは大切です。このブログもそのためにあります。ですが、睡眠が人生の目的になってしまっては、本末転倒なのですよね。スコアに追われて眠れなくなるくらいなら、「まあ、よく眠れた」と思って一日を始めるほうが、よほど健やかです。
今夜も「まあ、よく眠れた」と思える朝が迎えられますように🐑🌙
この記事は書籍からの学びをもとにした一般的な情報提供であり、医療行為や診断に代わるものではありません。記事中の睡眠時無呼吸症候群・不眠症に関する記述は、書籍で紹介されている内容の紹介であり、症状の判断や自己診断を目的とするものではありません。大きないびきや日中の強い眠気、眠れない状態が続くなど、気になる症状がある場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。

